シラバス照会 照会
2013年度
授業科目名 数学ⅠA
備考 平成23年度以降入学生のみ
担当者 鹿島 秀元
開講時期 前期 単位 2
サブタイトル
Linear Algebra 入門 線形代数学
ひとことガイド
 「行列」概念を適用する事により,非常に見通し良くかつ論理的に,一般的な連立1次方程式の解を求める事が出来る.また,解を求める理論的根拠を詳らかにする事を端緒とし,更に発展的な「固有値」「対角化」という理論上及び応用上の両面において極めて重要な概念を真に理解出来る.この様な線形代数の基礎を講義する.
授業の概要
 「数学は近代経済学を学び,資本主義社会を生き抜くために,ますます必要な学問なのです」この言明は,小室直樹著『数学嫌いな人のための数学』の冒頭に在る.この様に,文系だから数学は不要であるという考えは,過去の遺物である.その証左に現在,数学の必要性・有効性が広範に認識され,数学を応用していない分野は皆無である.そして種種の分野において,複雑な現象から本質を抽象する為に事物を数学的に把握し,理解し,分析する能力が必須となり,高度な数学が益益要求されている.経済・経営系分野(以後EMと略)も御多分に洩れずである.
 上述の時局に鑑みて本講義では,EMで最低限必要な数学の1つである『線形代数学』を講義する.2次行列の演算から対角化迄を扱い,理論面(定理の証明等)を重視し講義するが,EMでの実際の応用例も紹介する.講義水準は,基礎・入門程度である.とは言え,凡そ数学は比類無き厳密性と高い抽象性(以後SAと略)を兼備している学問である.しかし,初学者にSAを極度に要求すると無理が生じ,却って教育効果は薄らぐ.そこで,担当者は均衡を思慮し,本講義がある程度のSAを保持しつつも,常に具体的・例証的・簡明平易に為される工夫を随所に凝らしている.尚,受講に際して四則演算程度以外の予備知識は不問だが,知的好奇心は大いに必要となる.最後に「本講義受講=事物の抽象化を学ぶ端緒」が成立する事を付記しておく.
授業の到達目標
①線形代数学の基礎的理論を真に有機的に理解・修得し,簡単な場合に応用出来るようにする.【知識・理解(基礎的実学)】
②線形代数学を通して,数学的思考力を涵養し,物事を柔軟に思考出来る礎とする.【総合的な学習経験と問題解決力(柔軟な思考力)】
③線形代数学を実際の多くの場面で応用出来る事に興味を持ち,視野を広める.【汎用的技能(楽しい生き方)】
④真面目に出席・受講し,小リポート課題に積極的態度で取り組む.【態度・志向性(思いやりと礼節)】
優先順位は,高い順に①>…>④である.尚,【 】内は,関連する学士力における能力の指針である.
授業計画
 敢えて,注意喚起しておく.講義概要,及び以下の講義計画から直ちに分かろうが,『線形代数学』の入門講義である,本講義「数学ⅠA」は.
 『線形代数学』を講義科目名としない真意は知らぬが,制度上の都合であるのであろう.その為,サブタイトルの方がよく体を表しており,授業科目名が実体を表していないという非常に摩訶不思議な冠履顛倒の状態になってしまっている.それ故,時たま,次のような質問をする学生が少なからずいる事も仕方無い事と首肯できるのだが….
 Q:本講義「数学ⅠA」は,高校の「数学Ⅰ,数学A」の復習,若しくは程度を上げて,発展させて講義されるのですか? A:全然,違います.
 Q:高校で「数学Ⅰ,数学A」を勉強したから,本講義を受講しなくても良いですか? A:お任せしますが,興味が有れば受講されてはどうですか.ただ,本講義の内容は高校の「数学Ⅰ,数学A」のそれとは全く異なります.
 この様に本講義は,高校での「数学Ⅰ,数学A」とは内容的に無関係であり,また高校の「数学Ⅰ,数学A」の復習をするものでもありません.そして,高校の「数学Ⅰ,数学A」の知識も仮定しません.


講義計画

【前  期】2次行列中心

[線形代数学とは]
1 線形代数学とは何か
[行列の基礎]
2 行列の定義,重要な行列(単位行列,零行列等)
3 行列の和,差,スカラー倍の演算
4 行列の積の演算,行列の演算の基本性質
[行列式,逆行列,連立方程式]
5 行列式の計算
6 逆行列の計算
7 逆行列と2元連立1次方程式
8 Cramer's rule 
[固有値,固有ベクトル,対角化]
9 2次方程式の解の公式,因数分解
10 固有値の計算
11 固有ベクトルの計算
12 行列の対角化
13 対角化と行列のn乗
[応用]
14 Cayley-Hamilton theorem
15 人口問題
成績評価基準
①行列の演算,連立1次方程式の解法,行列式,余因子,逆行列,固有値,対角化を真に理解しているか.
②講義で証明した重要な定理の証明を真に理解しているか.また,定理の意義,意味する事を理解し,正しく適用出来るか.
③講義で紹介した応用例を支えている理論的根拠を論述出来るか.また,他の応用例を挙げる事が出来るか.
④出席回数,受講態度,小リポート課題の内容は十分なものか.
成績評価方法
 上記項目「成績評価基準」の①~③は前期末試験(100点満点)の点数Xで確認する.④は出席(1回10点×15回=150点満点),小リポート(1回15点×10回=150点満点)の合計点数Yで確認する.ここで,α=[Y/30]([a]はaを超えない最大整数)とし,次式で算出されるSを最終評価点とする:S=X(if X≧80 or X+α≦59),S=X+α(otherwise).
教材

種別 著者 書名 出版社 出版年
テキスト 小松建三 数学姫―浦島太郎の挑戦 数学書房 2010
参考文献 石井伸郎・川添 充・高橋哲也・山口 睦 理工系新課程 線形代数 培風館 2004
参考文献 三宅敏恒 線形代数学―初歩からジョルダン標準形へ 培風館 2008
参考文献 G.C.アーチボルド&リチャード・G.リプシー 入門 経済数学Ⅰ 多賀出版 1982
参考文献 G.C.アーチボルド&リチャード・G.リプシー 入門 経済数学Ⅱ 多賀出版 1983
参考文献 吉田和男・島 義博 経済学に最低限必要な数学―直観による理解(増補改訂版) 日本評論社 2010
 √キー付きの電卓(廉価なもので可)を毎回持参されたい.
学習上の留意点
 本講義は,板書解説を中心に指定教科書に沿って行う.また合計10回の小リポートを課し,点数,正解を付して返却する.特に,数学は復習が肝要である.講義で分からない箇所は研究室まで質問に来て,早期解明を心掛ける事(時を得た一針は九針の手間を省く).受講者には,講義内容の確実な定着を図る為,能動的に演習問題を解くという姿勢を切望する.
 講義中私語等で他の受講者に迷惑を及ぼす者には,厳重に注意し事態によっては受講をお断りし,退室願う場合も有る.『数学ⅠB』,『数学ⅡA』,『数学ⅡB』,『統計学』との同時履修が理想的であり,強く推奨する.
 その他注意すべき委細は,別途適当な方法で知らせる.
授業準備
 √キー付きの電卓(廉価なもので可)を毎回持参されたい.